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おめおめと、還暦

毎年巡ってくる、自分の誕生日。

59才から60才に代わってみると、それまでのこの日の受け止め方と、まったく違うことに自分でも驚く。

振り返ってみれば、今まで自分はなんとのうのうと、ぬるま湯の中で過ごしてきたことだろう。


激しい出世競争などまったく縁のないところで、人間関係の軋轢にもまれることもなく、そのくせ小さな不平不満を腹に持ちながら、それでも過ごしてこられた人生。


そんな自分が辿ってきた道筋が、この先大きく方向を変えるとは思えない。

だけど、同じ道を歩んでいくにしても、歩み方はいろいろあるだろう。


歩み方を、変えていこう。


まわりに気を配り、過ぎたことに気を配る。




3年前、はじめて九段の靖國神社を訪れ、戦争の遺品や遺書の数々を目にした時の衝撃は、それまで一度も感じたことのない種類のものだった。

今まで幾度もチャンスがありながら、触れようとも深く考えようともしなかったあのころの戦争や、それに関わった人たちのことを、少しずつ考えるようになった。


なんのために。



戦後10年ちかく経ってから生まれた私の身の回りには、まだまだ戦禍の名残りがあちこちに見られた時代だった。

繁華街の入り口には決まって手や足のない傷痍軍人さんたちが白装束でハーモニカやアコーディオンを弾いていたし、近所の防空壕跡がかっこうの遊び場だったし、少年雑誌には軍艦の図解が並び、戦闘機乗りのヒーローが漫画の主人公だった。

撃墜王もゼロ戦も大和もグラマンも、私には単なる興味、遊びの対象でしかなかったけれど。



そんな過去の忌まわしい記憶を脱ぎ捨てるように、世の中は高度成長の波に乗り、だれもが過去を振り返らずに前を向いて進んでいった時代。

子供のころ遊んだ環境はそんなだったのに、それ以来、中学高校と、ついこの間のことだったはずのこの国の戦争のことをまともに考えたことなど、ついぞなかったといっていい。

というより、あえて忌避していたといったほうが正確か。

大学のときなど、校舎のすぐとなりに靖國神社がありながら、一度だってそこに足を向けるなど思いもよらなかったし、怠惰な生活がそれこそ青春と勘違いしたまま、流れていった時間のなんと多かったことだろう。



新婚旅行に訪れたサイパンで、リゾートというイメージの対極にある戦争の傷跡を間近に見て、脳天の一部分を殴られたような重い気分を味わう。

沖縄でも同じような気持ちを抱いた。


「自分はあの時代のことを、なにもわかっていない…」



3年前靖國へ行ったとき、それまでの漠然とした思いは確信に変った。

これではまずいんじゃないか…。


このままでは、あの時代に生きた人々の視線を、自分は永遠にそらし続けなければならなくなる。

誰のためにではなく、自分のために、この視線を受け止める努力をしよう。できるものなら荷物を受け取り、背負っていこう。



同じ年、東日本大震災が起こる。

あんなに信じられないような現実が身近に起こっても、なお対岸の火事を見るような、醒めた部分を捨てきれない自分。

募金だけしておいて、あとはYou tubeの映像にかじりつき、「もっとすごい映像はないか」と探している自分…。

半年後、そんな自分に嫌気が差しはじめたころ、強行軍で被災地に行き、そこに身を置いてみた。

すべて、自分のためだ。 自分のためだけに。


それ以後、ある種のトラウマになり、津波の映像など何ひとつ見ることができないでいる。

なんとちっぽけなことではあるけれど、目をそらさないがために得た代償なのだろう。

被災された方やボランティアで汗を流す人からは誹られかねないが、あのとき行ってよかった。

でなかったら、いまだに自分はかかわりを持たない対岸の人間であり続けたに違いない。






世の中には、知らなくても済んでいくことが、たくさんある。

でも、知らないで過ごすより知っておいたほうがいいことも、また多い。

この3年間、ようやくそんなことに気づかされた思いがする。


すべては、自分のためだ。

人のため、世の中のためなんて、肩肘をはらなくてもいい。

まずは自分が受け止めること。


87570002.jpg



この一年、実はとても自分の「老い」を感じた一年でもあった。

まだまだ現役でがんばらなければならない、泣き言なんか言っていられない現実はあるにせよ、フルパワーで動ける時間は確実に短くなってきている。

そんな中で、やり残していることへの焦りに似た気持ちが、ときおり頭をもたげてくる。

自分の心の折り合いをつけるため。

そんなための、時間を持ちたい。


87570001.jpg


昨晩、家族からうれしい祝福をたくさんもらった。

こんなろくでもない親でも、娘たちにはたったひとりの父親だ。

その父親が娘たちに誇れるものなど、残念ながらなにひとつない。

だけど、君たちは好むと好まざるとに関わらず、私のそんな遺伝子の一部を受け継いでいるはず。

目をそらすことなく、お父さんと同じものを見てくれるなら、それはきっといつか自分の血肉になり、心を豊かにしてくれるだろう。



おめおめと迎えることになった、「還暦」という代名詞のついた誕生日には似つかわしくないほど気恥ずかしく空虚な自分の半生を振り返って、そんなとりとめのないことを考えた一日だった。


女房からお祝いにもらったモモヒキが、とても暖かい。

この冬の半分を、損した気持ちだ。





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No title

遊び呆けてる「対岸の人間」なんで、とってもコメントしにくいのですが(笑)、還暦おめでとうございます。
きっと、娘さんには「自慢のお父さん」なんだろうな~(*^_^*)

私も、そろそろ真面目に生きなければと思っているのですが、どうしても遊び優先でいけません。
あと2~3年したら、心を入れ替えようかと・・・(爆)

No title

イケチャンどうもコメントありがとうございます。
還暦って、おめでたいどころか、本人は「えらいこっちゃ!」と焦るばかりでして、いよいよおまえはトシヨリの仲間入りだ!と名指しされているような気がしてなりません。
これからは電車のシルバーシートとか、「シルバーなんとか割引」なんぞの恩恵を受けつつ、ひっそりと暮らしなさいってことでしょうか(笑)

年のせいか、最近はめっきり冷え性になってしまったんですが、誕生祝にもらったモモヒキをはいて2日目、もうぜったい手放せません。

No title

還暦祝いに釣堀へ行って、1箔して伊勢神宮へ行きましょう。水曜日でも行きます。

No title

frankさんおはようございます。
そういえばfrankさんも今年、還暦?

お伊勢さん、いいですね。
お参りのあとはやっぱり、漣のエビフライ、かな。

還暦お祝い!

還暦を迎えられて目出度いのか、目出度くもないのかは分かりませんが(笑)、もうそんなお歳になられたんですねぇ!?

書かれることがいつも硬い(感じる)のでコメントしづらいことが多いんですが、自分の生き方とは真逆で真剣に生きられていることに感心しております。

これからはゆったりした気持ちでお過ごしになられてもよいのではないでしょうか?
ぜひフランクさんとともに、釣りされて伊勢神宮参拝されてはと思います。

No title

好人さんこんにちは。コメントありがとうございます。
肩の力を抜いて本音を書いていくと、私の場合どうしてもこんな書き方になっちゃうんです。
まあ、普段の仕事ぶりが「ぬるま湯」にどっぷりですから、あんがい硬軟ちょうど釣り合いがとれてたりして(笑)
クソおもしろくもない日記ですけど、またたまに覗いてやってくださいまし。
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Author:smile
わが家のワンコを溺愛する「わんこおやじ」。
本業(写真店)のかたわらワンコ用スイーツも作っています。

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