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生き証人

今年88歳を迎えるというご老人が、

「わしでも使えるカメラを世話してくれるか」

ということで、先日デジタルカメラをご購入いただいた。


「え~と、おじいさんは昭和何年生まれになるんですか?」

と聞くと、

「わしゃ、大正15年生まれやて」


言葉は悪いが、なにかとんでもない貴重品を前にしたような心境になる。


「この年でもこうして元気でいられるのは、若いころ海軍で鍛えられたからや」

話し方も素振りも、とてもそんな経験を感じさせない柔和さを併せ持つ、不思議な印象のご老人だ。



以前、店にいらしたときに、海軍の航空兵だったこと、そして終戦間際には特攻要員として九州の前線基地に送られていたことは聞いていた。


「わしは、特攻隊の生き残りや…」





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語り口はやさしいけれど、この人の話にはそれを体験した人が持つ、重みがある。

戦争の真っ只中に青春をささげ、昭和から平成を生き抜いてきた、おそらく最後の世代。

あのころのことを、生の声で語ることのできる、最終ランナーのひとりと言い換えたほうが正確か。



この人から聞きたいことは、山ほどある。

だが、この人が語り残したいことが、私が聞きたかったことと同じものだとは限らない。

礼を失せず、ひとつでもあの時代に起きたことを教えていただければ…。


ただ、私の一方的な思い入れが、飄々と余生を楽しんでいらっしゃるようにも見えるこの人の、できればそっとしておきたい部分をあばくことにもつながらないか。


私が差し向ける話題の矛先を、さらりと別な方向にかわす老人の何気ない所作に、ふとそんなニュアンスを感じ取った。


でもいい。これから先、このご老人の気が向いたとき、どんなことでも徹底的に聞き役に回ろう。

私にできる精一杯の心遣いは、それしかない。



「きょうびのカメラは、わっかりゃせんのう~」

「はは、だいじょうぶです。昔のカメラより、ずっとラクかもしれませんよ。それにめんどくさいことはぜんぶ私がやりますから、いつでも店に来てくださいね」


いつまでもお元気で店に顔を出してほしいと、心からそう願う。




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Author:smile
わが家のワンコを溺愛する「わんこおやじ」。
本業(写真店)のかたわらワンコ用スイーツも作っています。

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