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ラストシーン

昨日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見にいってきた。

スタジオジブリの新作映画、また夏休みということもあってか、田舎のシネコンも多にぎわい。


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う~ん、だけどどうだろう、「宮崎駿の最新作」というだけで見にきたジブリファンにとっては、少々難解に過ぎる作品ではなかっただろうか。

若いカップルや親子連れにとって、このストーリー展開がすんなり理解できたかどうか…まあそんなこと、私が心配することでもないんだけど。



映像の美しさは、さすがに宮崎駿だなと思わせる作りこみ。

「この映画を楽しみたかったら、あんたたちもっと勉強しなさい!」

そんな監督のつぶやきが、聞こえたような気がしたのだが。

その意味では、宮崎駿の思い入れ最優先に作られた辛口の映画に違いなく、この人のわがままと情熱とやさしさがむき出しに表現された作品といっていいだろう。



「風の谷のナウシカ」に始まり「紅の豚」で頂点を極めたように見える、この人の空を飛ぶことへの憧れは、いまや老醜をさらすだけとなった私たちを含めた団塊の世代がまだ子供だったころ、多くの少年が共有していたヒコーキへの思いを棄てることなく、今の時代にこんな形で蘇らせてくれたようなものかもしれない。

より高性能を目指して昇華していく当時の航空機産業において、まだまだ「人間臭さ」を残していた時代のヒコーキが、こうして衆目にさらされることが、なんとなく嬉しかったりする。

でも、この人の描く「空飛ぶ乗り物」は、どうしてこんなにも一様に人間臭いんだろう。


空を飛ぶヒコーキへの憧れと、殺戮兵器としての飛行機を作らねばならない葛藤を、寡黙で一途な主人公、堀越次郎は訥々と演じ、監督は彼にこういうセリフを吐かせた。

「機銃を載せなければ、ちょうどいいんですが…」




そして監督が愛してやまない信州富士見高原の美しい情景が、ヒロイン菜穂子に切ないほど同化している。



堀越次郎と、堀辰雄。ファンタスティックな二つの世界の融合…。

宮崎監督が生涯をかけて描きたかったものを、2時間と少しの枠の中に全部つぎ込んだ。そんな映画だといってもいい。


ストーリーが飛躍したりつかみどころがなかったりと、この人が敢えて迎合せず説明的にしなかったところを私たち受け手が想像たくましく埋めていかねば、この作品の評価は案外に低いものだったりするのかもしれない。

少なくとも、ジブリ=子供向けと誤解して、敬遠すべき映画ではないと思う。





映画のラストシーンで、最後の最後に初めてゼロ戦の雄姿が描かれる。

その映像の美しさには、だれもが息を飲むことだろう。



「美しい機体だ」

「でも、一機も 戻ってはきませんでした」



ふと、「紅の豚」で戦闘に散った幾千の飛行機が空高く昇っていくシーンがオーバーラップして、唐突に嗚咽がこみ上げてきた。



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Author:smile
わが家のワンコを溺愛する「わんこおやじ」。
本業(写真店)のかたわらワンコ用スイーツも作っています。

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