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戦いすんで

船を下りて道具を片付ける。

ここは洗い場もきちんと整備され、汚れたバッカン類も洗って車に積み込めるので後がラクだ。

船長が「○○さ~ん、どうでした?」

と釣果を聞いている。

すると底物師がクールバッグから立派な石鯛を出してきた。

「おお~立派やね~、53cmあるわ。先週に続いて連続やね~」

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そしてグレ師も釣る人はちゃんと釣っているのである。

40cm級を3枚。

名礁イナフネに渡った3人の内のひとりだ。

他に同クラスを2枚の人もいた。

まあ、大半の人が私と同じ、ボーズだったが。

でも、結果を目の前にすると、やっぱりくやしい。



ボイルのマキエ、3kgで半日を釣るペース配分はなんとなくわかった。
ケチって撒かなくても、3kgあれば6時間は大丈夫。
釣り時間の長いほかの地域や、エサ取りの多くなるこれからの季節でも、6kgは多すぎるだろう。

不安になって買い足したレンガも、これがあればマキエバッカンを波でさらわれてもなんとか釣りが続けられるし、最後に地合いがやってきたときでもひと勝負できるので、これはこれで保険のようなものか。


氷だけで他は空っぽのクーラーを抱えては帰るに帰れないので、地元のスーパー「長島ショッピー」に立ち寄り、おみやげを漁る。

目についたのは、「さんま寿司」と、パックにてんこ盛りの地物のサザエ、そして長島港で揚った天然物のワラサ。


すぐ近くまで開通している紀勢道のおかげで、帰りはなんと3時間足らずで店まで帰ってこられた。


店で釣具の片づけをしたあと家に戻り、水曜日の恒例になっているワンコのシャンプーを済ませ、「本日の釣果」で豪勢な夕食を楽しんだ。

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さんま寿司はありきたりの味だったが、つぼ焼きにしたサザエは身もハラワタもぷっくり太っていて最高にうまい。
それと、今の時期の天然ワラサをはじめて刺身でいただいたが、身がまさに筋肉といったプリプリの歯ごたえで、しつこさがまったくなく、いくらでも食べられるのには驚いた。
旬といわれる寒の時期には味わえないうまさだった。
鮮度も飛びきりで、水揚げされる地元ならではの味覚、といえるだろう。


次、磯に上がれるのは、いつ?

そのときまでに、もっとモチベーションをあげておこう。


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上げ潮

10時を過ぎ、海の「気配」がだんだんよくなる。

まあ、気がするだけだが。

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なんとなくザワザワしはじめ、サラシからのハライ出しと沖の潮が合わさるところにヨレができて、絶好のポイントではないかと感じ、タナをこまめに変えながら攻めてみる。

たまに仕掛けを張って聞いてみると、穂先の重さでまだサシエが残っているのがわかって、思わず

「おお~、なんかデカイやつがウロウロしだしたんかな~」

などと独り言をつぶやく自分。

一人で磯に乗っているとなぜか、

「おぁ~」とか

「ほっほ~」

と、わけのわからないことを平気で口走っていたりする。


トイレ休憩のついでにソーセージとノンアルコールビールで気分転換。


高場に立って西側にはこんな景色が広がる。

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大島一番の磯は隠れて見えないが、二番から五番、それに続く小磯がずらりと勢ぞろいの絶景だ。

磯釣りという趣味(道楽)がなければ、なかなかお目にかかれるものではないだろう。

このころまでは暑さもだんだんと厳しくなり、苦しい時間帯を予想していたのだが、沖合いから海面いっぱいに濃霧がさ~っと音もなく押し寄せてくるようになる。

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標高の高い山岳が一瞬でガスに覆われるように、TVで見た中国やイラクの砂嵐のような勢いで、まわりは見る見る、幻想的ともいえるような白い世界に包まれていく。

なんともいえない、ミストのシャワーを浴びていると、先ほどまでの暑さはどこかへ行ってしまい、長袖シャツでちょうどいいくらいの涼しさになってきた。

そんなとき、ハライ出しのヨレを漂っていたウキが斜めにゆっくりと引き込まれていく。

アワセを入れると、ドスッとした手ごたえ。

あ、これは本命かも。

グレならば40cmクラスか。

よ~し、よ~しと頭を冷静にしながらやり取りにかかったとたん、2度目の締め込みでフッと重量感が消えてしまう。


う~ん、掛かりが浅かったか…

アイゴのような執拗な引きではなかっただけに、これはもったいなかった。

ボイルのサシエを使いながら、生オキアミのときのアワセ方をしているから、こういうことになる。

今日メインに使っている鈎は、がまかつの「掛かりすぎグレ」6号というふざけたネーミングの短軸の鈎だ。

以前海上釣り堀で「短グレ」という鈎がいたく気に入っていたのだが、シェイプはそれにごく近く、掛かったら逃さない攻撃的な形をしている。これの7号あたりが今日の海には合っていたのかもしれない。

ただ、この時間帯、確実に海況が良くなりつつあるのが感じられた。

チャンスは今だと、神経を張りつめた釣りをするように心がける。

タナ、ガンダマの位置、流すライン。

ふたヒロから底すれすれの四ヒロまで、あちこちを探ってみるが、答えが見つからずに時間が過ぎていくばかりだ。

12時10分前、道具を片付け、磯を清掃して迎えの船を待つ。

やがて濃霧の中を、イナフネの釣り客を回収してきた船が現れた。


今日の釣りは、あのワンチャンスだったな~…

まあいいさ。次にするべき宿題はたくさんもらったし、なにより磯に立つことが叶ったのだから。



次々と釣り客を回収し、濃霧の中を港へ向かう船。


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視界は進むほどに悪くなり、まさに五里霧中の状態だ。

船長も目視が効かないのでレーダーをにらみながら超スローで船を進め、私たちも対潜哨戒の見張りのように真っ白な海面に目を凝らす。

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今乗っているのが輸送船や駆逐艦で、今は太平洋戦争のさなかで、もしも向こうから不意に真っ白な魚雷の航跡が走ってきたらどんなだろうと、想像してみる。


「まだ陸地、見えへんな~」

「まだ、な~んもやね~…」


優秀なレーダーを持たなかった日本の船乗りさんたちはさぞ不安な心持ちだったことだろう。


やがて見覚えのある磯の地形がうっすらと姿を見せはじめ、湾内へと進むうちに、今までの濃密な霧がウソのように青空が現れてきた。

ああ、陸地はこんなにいい天気だったんだ。





ボイルオキアミの釣り

生に比べたらとても身がしっかりしているので、鈎持ちが格段にいい。

ということは、魚も一気にエサを飲み込むことはせずに、長時間口でくわえたままという感覚を持っていなければならない。

それがようやくわかったのは、釣りを終えた後だったのだが(笑)



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マキエを打ち返しても、今日はエサ取りがうるさくない。
大量の集魚剤を撒いて要らぬエサ取りを呼んでしまうより、エリア内の魚だけをこちらに向けさせるボイルオンリーのマキエのほうがずいぶんと釣りやすいものに感じられる。

これでじゅうぶん集魚効果はあると信じて、少量ずつを間断なく。


鈎に掛かるエサ取りもイソベラ、キュウセンがほとんどで、沖目にアカジャコ。うるさい子サバ、子アジはこの海域にまだ群れていないらしい。


「ボイルは沈みが遅い」とよくいわれるが、沈降速度は生オキアミとそれほど変らないのではないか。
足元のサラシにうまく巻き込ませられれば、底のほうまで一気にマキエを効かせられそうである。

仕掛けがハライ出しに押されて東側の磯際に沿って流れていこうとするとき、ウキがじわりと押さえ込まれた。
一瞬の間をおいてアワセを入れると、ベラと違って今度は少しましな型のようである。

お~っとっとっと…

強烈な締め込みに思わず前のめりになり体勢を崩されるが、一段低場へ降りてやりとりを始める。

情けないことに、1.5号の竿、2.5号のハリスのポテンシャルが思い出せず、もたもたと思いのほか時間がかかってしまったが、やっとこさ水面に顔を出したのは、想像した通り、35cmクラスのアイゴだった。

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ケータイを取り出し写真を撮ってから、タモに入れたままリリース。

ウキを浮力ぎりぎりのタイプに代え、G2のガンダマだけで落とす、軽い仕掛けに変えてみた。


このあと沖目をウキ下竿1本ぐらいで流していてこんなメバルを拾う。

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これも写真を撮って海にお帰り願った。


う~ん、グレはどこにおる…

やがてざわついていたサラシも静かになってきた。そろそろ干潮か。





コドラへ上がる

船は港を離れ、沖合いにかすむ大島群礁を目指して疾走を始めた。

紀伊長島の磯は大別して、港を出て東側の沖磯群「ウワテ周り」とはるか沖合いの「大島周り」の二つに分けられる。季節や海況、客の要望で基本的にはどこでも行ってくれるが、一栄丸はどちらかといえば大島方面を得意としている。

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船上から見る、神々しいまでの朝日。 釣り人ならではの特権のような眺めに、同船者の目が釘付けになった。


やがて大島群礁に到着。 船はまずナナシのハナレに磯付けし、チャラン棒(荷掛け棒)を持って一人が降りる。大潮の満潮時は完全に水没するような小さくて低いシモリのような磯だから、そうとう慣れた人でないと渡礁することは無理だ。

そして本島正面にずらりと居並ぶ一級磯、「一番」から順に磯付けをはじめ、一人、二人と降ろしていく。同じ渡船区内の長福丸や石倉渡船はウワテのほうへ行ったか、姿は見えないので磯取り合戦の緊張もなく、一栄丸の独占状態だ。こんな一級磯にパラ、パラと少ない人数でばらけて楽しめるのは、やはり平日だからだろう。

「四番、だれか上がりませんか~?」

船長がマイクで呼びかけるが、だれも反応がないので一瞬体が動きかける。ここも過去に好んで上がり、得体の知れない大物に3号ハリスを何度も飛ばされたことがある、思い出の多い磯だ。
だが足場は決してよくない。どのポイントもゴツゴツと、前下がりの傾斜がきついのだ。フットワークに自信のない今の私には危険かもしれない。

直後、二人のグループが手を上げ、渡礁を始める。

「次、コドラ、だれかいる?」

「はいっ」

念願のコドラが目の前に迫ってきた。渡礁を手伝ってくれそうな人は見当たらないので竿ケースとエサバッカン、クーラーを両手に下げ、ホースヘッドに立ちバランスをとりながら渡礁のタイミングを計る。

「そりゃっ!」

なんとかコケることもなく、岩場にはりついた。ボイルオキアミの軽さがありがたかった。

船は残り3人の釣り師を乗せて、イナフネ方面へ遠ざかっていく。


本命ポイントまで道具を運び終え、呼吸を整えながら、まずは磯に上がれた感慨に浸る。それもイメージしていたとおりの磯に上がれたんだから、ほとんど夢がかなったといっていい。

「ふうっ…」

ええっと、まずはなにから、どうするんだっけ…

マキエの準備、海水を汲んで、仕掛けをこしらえて…ブランクが長いせいで、ちっとも要領よくことが運んでいかない。

磯の上で老眼鏡なんか使ったことがなかったのに、こいつ無しでは情けないことにイトも結べなくなってしまっている。

そんなこんなでかれこれ30分ほども費やし、ようやく準備が整い、気持ちも落ち着いてきた。

そうだ、どうせなら朝飯も食っちまおう(笑)

ボイルのマキエを少量ずつV字の切れ込みになったワンドの奥に撒きながら、焼きソバパンとクリームパンを牛乳で胃袋に流し込んだ。

これから納竿の正午まで、正味6時間ちょっとに3kgのボイルをどういうペースでどこに撒いたらいいのか、今日はそれをいつも心がけていよう。

さあ、お腹もふくれたし、いっちょ、はじめますか。

愛竿のベイシス磯1.5号5.3m、ラインは2.5号、ハリスも2.5号を二ヒロの直結でウキは細身のドングリ3B負荷。サラシの中を釣る形になるのでオモリはB二つとチモト近くにガンダマの2号を段打ちにした。

とりあえずウキ下は、二ヒロ半でスタートしてみる。


久々の磯釣り

仕事のことや家族の事情もあって、無理やりに押さえつけて封印してきた磯へのあこがれも、いつしか自然消滅的に小さくなり、釣りそのものへの興味もほとんどなくしていた最近の私だったが、親父の忌明けを機にふと、心の隅で熾き火のようになっていた釣りの虫を揺り動かしてみると、眠りこけていた、というかもう目を覚ますことがないと思っていた釣りの虫は、みるみる頭をもたげてきた。


ひと通り準備を整え、餌屋にオキアミの解凍を頼み、紀伊長島の一栄丸渡船に電話を入れる。

「明日はまだ波があるかもしれませんよ」

「上げてもらえる磯でいいです」

そう電話で伝えながら、心の中では大島群礁の一級磯、「コドラ」に上がっている自分を想像していた。
あそこなら足場も比較的よく、足腰に自信のない自分でもなんとかなりそうだったから。


久しぶりの単独釣行、それも磯。 ここ数日、それこそ分単位で気持ちが高揚してくるのがわかるほどだったから、火曜日は仕事を終え家に戻って夕食の後、着替えを済ますとすぐに家を出た。
往路は若いころから通いなれた、シタミチを走っていこう。

幹線の名四国道まで出ると、以前に比べて交通量がずいぶん少ない感じがする。高速網が整備され、そちらを走行する車が増えているからなのだろうか。

松阪を過ぎ、国道42号線を多気町まで来ると、田舎道だった昔の面影はまったくなく、整備された近未来都市のような広い道路に生まれ変わっている。
なぜなんだろうと思いながら走っていると、左手にシャープの巨大な工場が見えてきた。
工場の誘致で、良くも悪くも町はすっかり変ってしまったんだろう。
がらんとした工場正門を過ぎるところで、私は「がんばれ!」とシャープに声援を送った(笑)

近未来都市を過ぎると、あとは昔通ったそのままの山道が続く。
すると不意に霧が立ち込め始め、みるみる視界が悪くなってきた。
鹿が出てくると危ないので、スピードを落としてゆっくり走る。思ったとおり、しばらく走ると対向車線のガードレールのところに大きなお腹をした鹿が横たわっていた。たぶん車にはねられて絶命しているんだろう。鹿も不運だが、当たった車もタダではすまなかったに違いない。

大内山インターのところで国道をそれ、エサを予約しておいた「釣りエサ市場」に立ち寄る。
大きな店内に客は私ひとり。レジの男性も女性も、なんとなく愛想が悪かった。

三原憲作さんの店としてよく知られていた釣りエサ市場だったが、滝原から大内山に移ってからは経営者が代わったらしいということは先日ネット上で知ったことだ。
ちなみにボイルオキアミは3kg一袋が1600円。これが高いのか安いのかはわからないが、「生」に比べたらずいぶん割高に感じるけれど、集魚剤を買わないですむ分、トータルでは財布にやさしいといえるかもしれない。

ただ、はじめてのボイルオンリーの釣り、この3kgだけで釣りをするのが少々心もとなく感じたので、荷坂峠の手前にある「エサ友」でボイルのレンガMサイズを買い足した。弾薬不足の不安を抱えたまま、戦場には行けない。

峠を下り、名倉港の一栄丸に着いたのが午前3時前で、車内で1時間ほど横になる。だけど久しぶりに味わう高揚感でウトウトできるはずもなく、鳥の声で目を開ければもう外はうっすらと白みはじめていた。
ほかの車の釣り客も外に下りて仕度を始めているので私も仕度を整え、受付けをするため玄関をくぐる。

「岐阜の鈴木です。おひさしぶり」

「や~ほんま久しぶりやね。すこし痩せたん?」

船長は私のことを憶えていてくれたみたいだ。

もう20年以上も前の、ここの磯で味わったいろんなドラマが、ついこの間のことのように思えてきた。

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料金を支払い、総勢10名ほどの釣り師たちは竿ケースやバッカンを両手に、船着き場へ急ぐ。

この海の先に待っている磯に、恋焦がれたひとに会いに来たような気持ちの高ぶりを感じながら、通いなれた釣り人のような、何食わぬ顔をして船へ乗り込んだ(笑)






浦島太郎状態

しばらく釣りのことが頭になかった間、世の中ではいろんなことがあったんだってことに、今さらながらビックリしている。



「ダイワ精工」…この名前って、もうないんだね。

今は、なんだっけ、、グローブライドなんて、とても覚えにくいメーカー名に変ってしまっている。

DAIWAというブランドは残っていたのでホッとしたけど。


リョービも、マミヤOP(オリムピック)も、この業界からとっくに撤退してしまったし、なんか釣りに関する産業も、写真業界と似たところがあるのかもしれない。

でも写真に関して言えば、シャッターを押す(写真を撮る)という行為は縮小するどころかどんどん増えていっているわけで、写真店を含め、この業界がその受け皿になりきれていないという歯がゆい現実がある。

反面、釣り業界はというと、釣り人口は確実に減ってきているらしく、メーカーも小売店も、われわれ写真店と同じようにたいへんな時代なのだろう。

私みたいにこれから再び釣りを始めたいなんていうのは、奇特な存在だったりするかもしれない(笑)

まあでも20年も前の愛竿をまだ後生大事に使おうなんていうオッサンは、業界にとっては何の役にも立たないか。



驚いたことはまだある。

グレ釣りにおいて、マキエの主体が「生オキアミ+集魚剤」から、ボイルオキアミに変っているらしいのだ。

え~っ、、ぜんぜん知らんかった…。



ニンニクの臭いをプンプンさせ、いかにも釣れそうなネーミングの集魚剤と生のオキアミをぐちゃぐちゃに混ぜてばんばんマキエをしていた時代は、私の知らない間に終わっていた。もちろん地域によって多少の違いはあるだろうが、生態系や環境のことを考えたら、遅かれ早かれこういう時代はやってきたのだろう。

半日の釣りでオキアミと集魚剤を10kg以上も持ち込んでいたころと違い、ボイルオキアミなら3kgもあれば充分なのだそうだ。

それをどうやって効率よく撒くか。 比重の軽いボイルだから、向かい風とか遠投とか、撒き方もそうとう工夫しないと釣果に結びつかないに違いない。


これだけでももう充分浦島太郎なのに、まだ

「え? し、知らんかった…」

ことがまだあったりするのだろうか。



寝てる子を起こす

四十九日も終わり、しばらくは何も考えないでボ~ッとした時間が続いた。


入院する2年ほど前からじいさんを放っておけないと感じるようになり、生活のいろんなところでじいさんに歩幅を合わせてきたところがあったと思う。

休みにどこかへ出かけることもめっきり少なくなったし、釣りも封印している間にまったくといっていいほど興味も失ってしまったといっていい。

行かなくなってからもずっと手元においておいた竿やリールも、きれいに磨き上げてから、倉庫にしまいこんでもう半年以上もたったろうか。

正直、また再開しようなどとは、毛ほども思わなかったし。



ボ~ッとした頭の中で、考える。

このまま過ごしていったら、俺、どうかなっちゃうんじゃないかな。


仕事以外に熱くなれるものがない毎日に、なんとなく不安はずっと感じている。

そのせいか、体調もなんとなくすっきりしない。



「どうだおまえ、もう一回、釣りをしてみないか」

頭の中の一人の自分がそうささやきかけ、億劫がるもうひとりの自分を煽ろうとしているみたいだ。

こういうのを、自己防衛本能とでもいうのだろうか。



そうさね~…


もう一回やれるんなら、やっぱり磯。

うん、磯釣りなら、やってもいいよ。





十数年前の少しシケ気味の秋、忘れもしない錦の磯、「ゲンタロウのハナレ」に渡礁するとき舳先からうまく飛びわたることができず、船頭に叱られたことがあった。

「あんたに今日のハナレは無理や。本島につけるから準備してや」

はっきりと体力の衰えを感じ、磯釣りをやめようと思った。


そして今、あの頃よりもっともっと体力も気力も萎えてしまってから、もういちどやってみたいなどと、思う自分がいる。


無謀、かな。

一過性の気まぐれ?




そう思いつつ、倉庫の中で何年も埃の積もった道具類を、少しずつ出してみる。

おそるおそる、という感じで。

バッカンを洗い、救命胴衣を点検する。ポケットのファスナーが錆び付いてしまっていたが、CRCでなんとか動いてくれ、ひと安心。


今日はリールを出してみた。


竿は、また明日。

あんな古い釣竿、今でも使えるのかな。


磯靴はずいぶん前に捨ててしまったから、新調しなければ。



心の中でブツブツつぶやきながら、ぐっすり寝ている子の体をゆさぶっている。






老人と海

彼岸だというのにギラギラと灼熱の太陽が照りつける筏の上。

今日はじいちゃんにとってなによりの楽しみの魚釣りだ。

だけど、半年前に来たときは絶好調でホイホイと沈んだじいちゃんのウキも、今日はなぜかおとなしい。



こんなときいちばん恐いのが「熱中症」

釣りに行く前からくどいほど水を飲むように言っておき、たんまりとペットボトルの飲料水を持ち込んだものの、減るのはビールばかりでじいちゃんの体はだんだんと干物のようにカサカサになっているに違いない。


「あと30分」
そろそろ片づけを始めようかというころ、干物になったじいちゃんがエサクーラーからサバの切り身を取り出しヨタヨタと振り込んだ仕掛けに、青物が食ってきた。

この日初めてじいちゃんに女神が微笑んだ瞬間だ。

最初こそ強い締め込みをこらえていたものの、バラしたらもったいないと思ったのか急に怖気づいてしまったじいちゃん、

「ちょっとワシ、自信ないで、替わってくれ」

竿を渡そうとするそんなじいちゃんにハッパをかける。

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じいちゃんが選んだエサで、じいちゃんが入れた仕掛けに食ってきたんだ。 獲ろうが獲れまいが、最後まで楽しめばいい。

ドラグをゆるゆるにしてほかのメンバーには時間をもらうことを許してもらった。

足腰がおぼつかないので座ったままのファイトだから、青物はいつまでも疲れを知らず翻弄され続けるじいちゃん。


長い長い戦いが終わって、やっとタモに良型のワラサが収まった。

「ふ~っ」

じいちゃんはもはや笑うこともできず、また椅子にへたり込んだ。


だれかに釣らせてもらったんじゃなく、自分で釣ったワラサ。

じいちゃんはこの魚のこと、ずっと覚えていてくれるだろうか。

プロフィール

smile

Author:smile
わが家のワンコを溺愛する「わんこおやじ」。
本業(写真店)のかたわらワンコ用スイーツも作っています。

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